言葉を「武器」にする技術 – 高橋健太郎

言葉を「武器」にする技術 - 高橋健太郎

言葉を「武器」にする技術 ローマの賢者キケロ―が教える説得術

欧米の知識人、グローバルエリートの基本教養であるキケローの名著『弁論家について』は2000年間、受け継がれてきた「人を動かす」言葉の技術の集大成です。日本ではこれまで本格的に紹介されることがなかったキケロ―の『弁論家について』を元に〈伝え方〉〈話の通し方〉〈納得させ方〉の“奥義”をわかりやすくまとめて紹介します。「人を動かす」言葉のテクニックの決定版!

第1章 説得の技法

・説得の3要素
 - 論理的な説得力
 - 話者の与える好印象
 - 相手の感情への訴えかけ

・説得する相手を見極めその心の内を分析しておくこと。『彼らが何を感じ、何を思い、何を期待し、何を望んでいるか』、それこそが『どういう根拠、どういう論理、どういう語り方』をするかを考える指針。

・どのように説得するか考える工程
 1. 何を語るかを考える
 2. それをどう語るかを考える

第2章 説得力の作り方

・論理的な説得とは
 - 根拠があること
 - 根拠と結論を結ぶ論理が正しいこと

・説得のパターン1 同等論法
 - 『同じものは同じ扱いを受けないといけない』という論理で説得
  例)「前回同じ作業をしたときは〜だけかかりました、今回も〜」
 - 注意点:何と何が同じが見極めを。「あのときとは条件が違うから〜」という反論にあう。

・説得のパターン2 なおさら論法
 - 『より大きいもの、より小さいもの』を引き合いにだす論法
  例)「あの仕事ですら〜だった、今回はもっと〜だ」
 - 注意点:比較は具体的な数値を。比較要素以外に関心がいかないように。「あのときとは状況が違うから〜」という反論にあう。

・説得のパターン3 反対論法
 - 『Aならば成功する』と主張したければ『Aの反対が失敗している』事例を探す
 - 反対とは似て非なるものに注意
  ・程度の違い:勇気と無謀、節約とケチ、冗談と悪ふざけなど
  ・反対と相互性の違い:売ると買う、計画と実行など
  ・反対と能動・受動:盗むと盗まれる、加害者と被害者など

・説得のパターン4 グループ論法
 - 『あるグループがXXXなら、属するものもXXXと扱われないければならない』という論理
  例)「ローマ人に選挙権があるなら、キケローにも選挙権がある」
 - 注意点:本当にそのグループに属しているかを確認

・説得のパターン5 結果論法
 - 『良い結果を出す原因は良いもの』、『悪い結果を出す原因は悪いもの』と結果で原因を評価する論法
  例)「この商品は広く受け入れられ、利益を生んだ、素晴らしい商品だ」
 - ↑を解説:「この商品」は原因、「利益」は結果。結果が「利益」という成功であるから「この商品」も成功と評価すべき
 - 『結果がどうだったか』に注目することで説得に迫力が増す

・説得のパターン6 原因論法
 - 結果論法の逆。『原因→結果』と原因で結果を評価する論法
  例)「この商品の売り方がビジネスとして邪道、利益はもたらしたが今後の模範とはできない」
 - ↑を解説:「商品の売り方」が原因、「利益」は結果。「商品の売り方」が邪道(=マイナス)だから、そこから生まれた「利益」も「模範とはできない」(=マイナス)
 - 注意点1:結果が求められる場では綺麗ごとになってしまう
 - 注意点2:現実の出来事(結果)の原因は大抵多数ある。因果関係の見極めは慎重に、漏れがないように。

・説得のパターン7 分割論法
 - 『個々の結果を合わせれば、全体の結果となる』という論法
  例1 複数分割)
  「売れる条件は3つある。ニーズ、品質、価格。ニーズは資料の通り相当ある。に品質は皆さんご存知の通り。価格も限界まで抑えた。したがって、この商品は期待できる、いかがでしょう?」
   - ↑を解説:「条件を分割」→「それぞれを満たしている」→「売れる条件を満たしている」
  例2 選択肢分割)
  「この状態を切り抜ける方法は2つしかない。降参か、イチかバチか勝負するか。いまさら降参はできない。なら、これで勝負するしかない」
   - ↑を解説:「条件を分割」→「どちらかを選ぶ」
 - 注意点:分割する要素に漏れがないようにすること

・説得のパターン8 証言・証拠論法
 - 『外部の材料を利用』する論法
  例)「この時期の投資は専門家もマズイと言っている。投資するのは避けたほうがいい」
 - ↑を解説:専門家の意見をもとに説得
 - 注意点:聞き手にとって信頼性のある情報であること

第3章 好かれる技術

・相手を説得するときは説得以外は何も望んでいないという態度で話を進めなければいけない。「煽ってやろう」「好かれよう」という意図を悟られてはいけない。

・感情的な言い方は逆効果。感情に訴える時こそ論理的な語り口で。

・説得に大切なのは『こちらが好かれること』。議論であれば、自分に反対する人が『(聞き手に)嫌われること』。

・聞き手に好かれる3要素
 - その人の品格
 - その人の功績
 - その人の評判

・功績、評判はさりげなく(余談や前置きで)。

・相手の好意を得るには語り口に品格が必要。穏やかな口調で。

・品格を感じさせる良い性格
 - 愛想がいい
 - 寛大である
 - 温和である
 - 義務感が強い
 - 物を欲しがらない
 - 貪欲でない
 - 実直
 - 謙虚
 - 辛辣ではない
 - 強情ではない
 - 争いを好まない
 - 残酷ではない

・説得や議論に人格攻撃はつきもの。聞き手から敵の好意を奪う行為。守るべきルールはある。

・人格攻撃の2つの方法
 - 主張の内側からの攻撃
  「彼の発想は利益のために顧客を捨てるもの。人道に反する。」
 - 主張の外側からの攻撃 
  「実際彼は直前になって逃げ出したことがある。」

・人格攻撃の注意点
 - 好かれている人間を攻撃するな
  ・人気者を攻撃するときは事実関係と理屈で攻める。その積み重ねの後に「じつはXXな人間なのだ」と匂わせることが大事
 - うっかり聞き手を攻撃するな
  ・事前調査必須。説得相手が敵をどう思っているか、共通の弱みを持っていないかなど

第4章 感情を煽る技術

・論理で負けそうなら、感情に訴えて説得するオプションももっておくべき

・感情論による説得は次の2点を確認しておく
 - テーマが感情論にふさわしいかどうか
 - 相手が感情的に動かせるような相手かどうか

・感情を煽る3つのルール
 - 自分が率先して怒り、泣く
 - 煽りは説得の全プロセスで行う
  ・扇動は相手に気づかれたら失敗する。さりげなく聞き手を煽っていく。
 - 感情的な語り口を穏やかで論理的な語り口と組み合わせる
  ・穏やかに語り口で開始、徐々に感情的に、説得の締めくくりは穏やかに。

・聞き手には事実だけを伝える。結論は相手が出すもの。

・論理的な話し方は扇動にはむかない(○○○だからxxxだのような説得推論)。

・感情を煽るために求められるのは結論を欠いた話し方
 - 「彼は上司にいい顔をするため、部下を犠牲にする」
 ↑根拠だけ、結論と論理は隠されている。↓解析すると
 「彼は上司にいい顔をするため、部下を犠牲にする(根拠)。彼は嫌われるべき(論理)。だから彼を嫌うべきだ(結論)。」

・論理的な語り口に煽りを仕込む話し方
 - 「経営者には説明責任がある(根拠)。”部下ばかりを矢面に立たせず”、自ら説明をするべきだ(結論)。」
 - 「良い商品ですね、きっと売れますよ。”バカにしていた奴ら”を見返すチャンスですね。」
 - 「彼は”保身第一の人”だから、この企画には乗ってこないと思います。」

・主張・説得には『自分と自分の説得内容が愛されるよう』に煽ること。聞き手の前での議論の場合には加えて『相手と相手の主張が憎まれるよう』に煽ること。

・相手に愛されるための3つのポイント
 - 聞き手の利益になることを強調する
 - 立派な人、弱い人、かわいそうな人のためであることを強調する
 - 自分の利益にはならないことを強調する

・憎悪を煽るには敵の主張に↑の反対の性質があることを強調する

・嫉妬心はとても強力な感情。多くの人の行動を左右する。炎上商法など狙いがある場合を除いて自分に向けさせてはならない。

・嫉妬の感情の煽り方
 - ターゲットの幸福が能力によるものではないことを強調する
  ・人が嫉妬を感じるのは自分と同等か劣った者に対して
 - ターゲットの幸福が不当な手段で得られたものだと強調する
  ・「彼は出世したけど、それは役員と個人的に親しいからだ」
 - 幸福なターゲットが聞き手を見下していることを強調する
  ・態度を問題にする
    「彼は優秀だけど、鼻にかけすぎ」
  ・成功の度合いを問題にする
    「彼は得意がってはいるが言うほどではない」

・嫉妬心を煽る時は軽く滲ませるぐらいにする。あからさまでは話し手自身の印象を悪くする。

・他人の悲劇的な事実について聞き手が自分に当てはめてリアルに感じるよう誘導する。

・憐れみをさせる煽動3種類
 - 過去同じ経験をした聞き手に対する煽動
  ・「あなたなら彼のつらさがわかるでしょう」
 - 将来その事態が起こることを恐れている聞き手に対する煽動
  ・「彼の姿は将来のあなたですよ」
 - 現在同じ境遇にある聞き手に対する煽動
  ・「あなたも彼と同じことに苦しんでいるんじゃないですか」

・現実感を醸し聞き手の感情を煽る
 - 聞き手が当事者(被害者)であることを強調
 - 情報に画像や音声など感覚に訴えるものを添付
 - 動物や子供など弱者を引き合いに出す

・煽動を利用してデマを広めようとする場合、「結果的にウソだったとしても知らないよりマシ」という論理を使用

第5章 絶対に失敗しない説得術

・反論の3パターン
 - こちらの出した根拠を否定する反論
 - 根拠と結論を繋ぐ論理を否定する反論
 - 別の説得を持ち出す

・説得のどこに反論が出てくるか予測がつく。事前に対応を考えておくこと。

・不利な話題は避ける。不利なパターンはこちらの弱い根拠・論理、相手のより強い主張

・不利な話題からは動揺した様子は見せず、穏やかで論理的な口調のまま話をそらす
 - 議論拒否「その点については話すのもばかばかしい」
 - 論点先取「それはすでに結論がでた話だ」
 - はぐらかし「もっと重要なポイントがある」
 - 揚げ足取り(矮小化)「それは火曜ではなく、水曜だ」

・逆に有利な話題からは絶対に動かない

・相手を追い詰める質問テクニック
 - 表現を変えて質問
 - 答えを代弁して相手の反論を待つ
 - 関係なさそうな質問に答えさせて、そこから切り込む

・論理的な説得が難しい場合感情論で逃げ切る。
 - 自分の主張がいかに聞き手にとって有益で、私利私欲でないことをアピール
 - 自分の主張がいかに世の中・弱者のためになるかをアピール
 - 反対の意見が↑の逆になることをアピール

・ネストリウス的順序
 - もっとも強い言い分は説得の最初に(穏やかな口調で)
 - 2番目に強い言い分は説得の最後に(穏やかな口調で)
 - 残りはまとめてその間に

・罵倒への対処法
 - 叱責する(穏やかに・激しく)
 -「聞いてもらえば賛同してもらえるはずだ」と約束
 -「表現は悪かったが聞き手にとって有益だ」と弁解

第6章 表現力を磨く

・『うまい言葉使い』を連発しない。甘味は味覚の中でおも強く人を喜ばせるが、それが続けばもっともウンザリするもの。うまい言葉で盛り上げる箇所と、普通の表現で落ち着かせる箇所をつくって緩急をつける。

 滑稽な例)「これのモストインポータントなのは、オルタナティブなプロジェクトをベストプラクティスで完遂できるセルフスターターの確保」
 ↓
 修正版)「必要なのは今までにない企画を遂行できる人。それも、セルフスターターな人材でないといけない」
 ”セルフスターター”という珍しい言葉が浮かび上がる。重要な部分は他と違う表現で話に強弱をつける。

・ポイントを強調するための有効な手段は、『珍しい言葉』、『造語』、『比喩』。

・比喩にはおまけのイメージがつきまとう。使い方には注意を。下品なもの、汚いものは避けるようにする。

・比喩に対しては、比喩が過剰であることを主張し、類似点以外の点をつくこと
 例)自分の強引な手法が「強盗」に例えられたら「強引さ」という点以外での違いを指摘。
  「法律を犯してはいない」、「何か盗んだわけじゃない」など、最後に「そんな詭弁を弄する点では、そちらこそ詐欺師に近い」

・ユーモア、笑いを身につける
 - 説得する側に好意的な空気ができる
 - 話し手が頭の切れる洒落た人物だと印象つけられる
 - 反対意見を論外だと笑い飛ばせる
  ・「それは○○がxxするようなものだ」と絶妙にばかげたものと表現することは時に論理的な反論より効果がある。
 - 深刻さを和らげる
  ・戦場ではブラックジョークがよく生まれる

・ユーモアの種類
 - 聞き手の予想を裏切る表現
 - 聞き手が気に入らない人、ものについての毒舌
 - 聞き手が気に入らない人のバカな言動を真似る
 - 硬い話の中であえてくだらない話
 - 本当に言いたいことをあえて言わない

・ユーモアは聞き手がどう感じるかについて想像する。

・自虐的なユーモアは逆効果

・具体的なエピソードを出して、その人の内面の素晴らしさを褒める
 - その人に利益はないのに他者のためにしたこと(優しさ)
 - 苦労や危険の末に成し遂げたこと(勇気)
 - 逆境でも取り乱さずに耐え忍んだこと(精神的な強さ)
 - 公的、もしくは組織に表彰されたこと(器の大きさ)
 - 重要な成果を成し遂げたこと(正義感)
 - その人が初めて成し遂げたこと

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